AWS Builder Center

AI-DLC Workflow V2のCLIコマンドガイド: やりたいことから逆引きする

`/aidlc` で始まる。ここまでは分かった。でもフラグ、ランナーコマンド、ユーティリティツール、セッションスキルと広がっていくと、どれをいつ使うのか見失いがちです。この記事で全部整理しましょう。AI-DLC Workflow V2(以降V2)の全コマンドを、ユースケース別に逆引きできる形にまとめます。シリーズ第18回。

Series: AI-DLC Workflow V2の解説 (31 articles)

  1. …
  2. 18
    AI-DLC Workflow V2のCLIコマンドガイド: やりたいことから逆引きする This article
AWS Japan, Developer Specialist SA

1. ハーネス別の呼び出しプレフィックス

まず前提を揃えましょう。V2のコマンドは、どのハーネス(実行環境)でも同じ機能を持ちますが、呼び出しのプレフィックスだけが異なります。
ハーネスプレフィックスツールパス
Claude Code/aidlc.claude/tools/
Kiro IDE/aidlc.kiro/tools/
Kiro CLI/aidlc.kiro/tools/
opencode/aidlc.aidlc/tools/
GitHub Copilot/aidlc.aidlc/tools/
Codex CLI$aidlc.codex/tools/
この記事では /aidlc を使って説明します。Codex CLIを使っている場合は $aidlc に読み替えてください(CLI Commands )。

2. Quick Reference表

では、全コマンドの全体像を眺めてみましょう。細かい使い方はセクション3以降で扱うので、ここではまず「何があるのか」を把握するための一覧です。

/aidlc フラグ群

コマンド説明
/aidlc [scope]明示スコープで新規ワークフロー開始
/aidlc [description]記述からスコープを自動検出して開始
/aidlc compose "<task>"Adaptive Composerでカスタムスコープを提案
/aidlc compose --report <path>スキャンレポートからComposeを実行
/aidlc --new-scope "<task>"既存スコープにマッチしても強制的にカスタムスコープを作成
/aidlc既存ワークフローの再開(またはインテント新規作成)
/aidlc intent [name]インテント一覧表示、または切り替え
/aidlc space [name]スペース一覧表示、または切り替え
/aidlc space-create <name>新しいスペースを作成
/aidlc --status読み取り専用のステータス表示
/aidlc --doctorセットアップのヘルスチェック
/aidlc --doctor --export診断レポートを書き出し
/aidlc --stage <slug|#>指定ステージへジャンプ
/aidlc --stage <slug> --single1ステージだけ単独実行(ワークフロー非進行)
/aidlc --phase <name|#>指定フェーズの先頭へジャンプ
/aidlc --scope <name>スコープを変更
/aidlc --depth <level>深度レベルを変更
/aidlc --test-strategy <level>テスト戦略を変更
/aidlc --review <class>レビュー上限を設定
/aidlc config get/set/listワークフロー設定の取得・変更・一覧
/aidlc plugin select/list/syncプラグイン管理
/aidlc --versionバージョン表示
/aidlc --helpヘルプ表示

ランナーコマンド

コマンド等価操作
/aidlc-bugfix/aidlc --scope bugfix
/aidlc-feature/aidlc --scope feature
/aidlc-mvp/aidlc --scope mvp
/aidlc-security-patch/aidlc --scope security-patch
/aidlc-<stage-slug> (29種)/aidlc --stage <slug> --single
/aidlc-initフレッシュなワークスペースでの /aidlc
/aidlc-compose/aidlc compose のタイプ可能なショートカット

セッションスキル

コマンド説明
/aidlc-session-costセッションのコストビュー
/aidlc-replayセッションのナラティブ生成
/aidlc-outcomes-packチームへの引き継ぎドキュメント生成
一覧を見て「多いな」と感じたかもしれません。でも安心してください。日常的に使うのはこの中のごく一部です。次のセクションで「やりたいこと」から引ける形に整理します。

3. 用途別ガイド(逆引き)

ここからが本題です。「やりたいこと」から引ける形で整理していきましょう。

ワークフローを始めたい

新しいワークフローを始める方法は複数ありますが、どれもスコープ(どのステージを実行するか)を決めるところから始まります。
やりたいことコマンド
スコープを指定して始めたい/aidlc bugfix /aidlc feature /aidlc enterprise など
タスクを説明して始めたい(スコープ自動検出)/aidlc Fix the null pointer in ProfileSerializer
既存スコープに当てはまらないタスクを始めたい/aidlc compose "harden the deployment pipeline and add observability"
スキャンレポートから修正フローを組み立てたい/aidlc compose --report sonar.json
スコープが自動検出でマッチしても、カスタムスコープを強制的に作成させたい/aidlc --new-scope "harden the deployment pipeline and add observability"
覚えているでしょうか。スコープは9種類あります。enterprise, feature, mvp, poc, bugfix, refactor, infra, security-patch, workshop です(第4回 で解説)。

ワークフローを管理したい

ワークフローが動き出した後の操作です。進捗確認、再開、切り替えなど、セッションをまたいで作業する場面で使います。
やりたいことコマンド
中断したワークフローを再開したい/aidlc (引数なし)
進捗を確認したい(状態変更なし)/aidlc --status
別のインテントに切り替えたい/aidlc intent <name>
インテント一覧を見たい/aidlc intent
別のスペースに切り替えたい/aidlc space <name>
新しいスペースを作成したい/aidlc space-create <name>
ワークフロー設定を確認したい/aidlc config list
設定値を変更したい/aidlc config set depth minimal

スコープ・深度・テスト戦略を変更したい

ワークフロー実行中でも、3つの制御軸はいつでも変更できます。ここで重要なのは、--depth と --test-strategy は独立した軸であることです(第14回 で詳解)。「成果物は詳細に作るが、テストは軽量に」という組み合わせ(--depth standard --test-strategy minimal)も可能です。
やりたいことコマンド
スコープを変更/aidlc --scope bugfix
深度を変更(minimal / standard / comprehensive)/aidlc --depth minimal
テスト戦略を変更/aidlc --test-strategy comprehensive
レビュー上限を変更(adversarial / advisory / none)/aidlc --review advisory
複数フラグを同時に指定/aidlc --scope bugfix --depth comprehensive

ステージやフェーズにジャンプしたい

「途中のステージだけ試したい」「あのフェーズからやり直したい」という場面です。slug(ステージの短縮識別名)または番号で指定できます。
やりたいことコマンド
特定ステージへジャンプ/aidlc --stage code-generation
ステージ番号でジャンプ/aidlc --stage 3.5
フェーズの先頭へジャンプ/aidlc --phase construction
フェーズ番号でジャンプ/aidlc --phase 3
1ステージだけ単独で試したい/aidlc --stage requirements-analysis --single
--single を付けると、メインのワークフローを進めずにそのステージだけを実行します。エンジン側で隔離が強制されるため、安全に試行できます。

Adaptive Composerを使いたい

静的スコープにフィットしない場面で、カスタムステージ構成を動的に提案させるコマンドです(第5回 で詳解)。
やりたいことコマンド
タスクからカスタム構成を提案させたい/aidlc compose "タスクの説明"
レポートファイルから構成を提案させたい/aidlc compose --report <path>
実行中にステージ構成を変えたい/aidlc compose(ワークフロー実行中)
ショートカットで呼び出したい/aidlc-compose

セットアップを確認したい

初回セットアップ時や、何かがうまく動かない時の診断に使います。
やりたいことコマンド
ヘルスチェックを実行/aidlc --doctor
診断レポートをファイルに書き出し/aidlc --doctor --export
出力先を指定して書き出し/aidlc --doctor --export --output <dir>
バージョン確認/aidlc --version

ワークフローを振り返りたい

ワークフロー完了後(または進行中でも)、セッションの経緯やコストを確認できます。これら3つのセッションスキルは読み取り専用です。ステージを進めたり監査イベントを発行したりすることはありません。
やりたいことコマンド
セッションのコスト・統計を確認/aidlc-session-cost
セッションの経緯をナラティブで確認/aidlc-replay
チームへの引き継ぎドキュメントを生成/aidlc-outcomes-pack

4. コマンド詳細 — /aidlc フラグ群

逆引き表で「何を使えばいいか」は分かりました。ここからは各コマンドが具体的にどう動くのかを見ていきます。

ワークフロー開始

/aidlc [scope] — 明示スコープで開始

スコープキーワードを直接指定して新規ワークフローを開始します。エンジンがスコープを認識し、何を作りたい(あるいは修正したい)かを尋ねてから、Initializationフェーズを実行してワークフローが始まります。
1
2
3
/aidlc bugfix
> What would you like to fix?
> The login API returns 500 when email contains a plus sign

/aidlc [description] — 自動検出で開始

タスクを自然言語で記述すると、エンジンがキーワードから適切なスコープを自動検出します。明確なマッチがあれば、スコープ名とステージ数・ゲート数が提示され、確認を求められます。
1
2
3
4
5
/aidlc Fix the null pointer in ProfileSerializer
> Starting a "bugfix" workflow for: "Fix the null pointer in ProfileSerializer"
> - 7 of 33 stages, 4 approval gates, 1 stage repeats per unit of work
> in Construction. Confirm to proceed, name a different scope, or say
> "compose" for a tailored plan.
どのスコープにもマッチしない場合や、記述が複合的な場合はAdaptive Composerの利用を提案します。

/aidlc compose "<task>" — Adaptive Composerを起動

静的スコープに当てはまらないタスクで、カスタムステージ構成を動的に提案させます。
1
/aidlc compose "harden the deployment pipeline and add observability"
Composerがタスクを分析し、EXECUTE/SKIPグリッドを提案します。承認ゲートで人間が確認してからワークフローが始まります。承認されたカスタムスコープは永続化され、以降 --scope <name> で再利用可能です。

/aidlc compose --report <path> — スキャンレポートからCompose

静的解析ツールの出力をそのまま入力として、修正フローを構成できます。
1
/aidlc compose --report sonar.json

/aidlc --new-scope "<task>" — カスタムスコープの強制合成

キーワードが既存スコープにマッチする場合でも、Composerにカスタムスコープを強制的に合成させます。
1
/aidlc --new-scope "harden the deployment pipeline and add observability"

ワークフロー再開・管理

/aidlc — 既存ワークフローの再開

引数なしで実行すると、aidlc-state.md を読み込み、4つの再開オプションを提示します。
  • チェックポイントから再開
  • 現在のステージをやり直し
  • ステージへジャンプ
  • 最初からやり直し
ワークフローが存在しない場合は、新規作成としてスコープの確認に入ります。

/aidlc intent [name] — インテントの一覧・切り替え

引数なしで現在のスペース内のインテント一覧を表示します。--json でJSON出力も可能です。名前を指定するとそのインテントに切り替えます。インテントの新規作成やワークフロー進行は行いません。SpaceとIntentの詳細は 第17回  で解説しています。

/aidlc space [name] — スペースの一覧・切り替え

引数なしでスペース一覧を表示します。名前を指定するとそのスペースに切り替えます。

/aidlc space-create <name> — 新しいスペースの作成

フレームワークのベースラインから新しいチームスペースを作成します。memory/, knowledge/, codekb/, intents/ の構造が生成されます。作成後に自動で切り替わることはありません。

ステータスと診断

/aidlc --status — 読み取り専用ステータス

現在のワークフロー進捗を表示します。フェーズ、ステージ、完了数、スコープ、深度が確認できます。状態の変更は行いません。

/aidlc --doctor — ヘルスチェック

前提条件、設定、ステージグラフの整合性を検証します。読み取り専用で、インテントが存在しない状態でも安全に実行できます。
検証項目には以下が含まれます。
  • bun のインストール確認
  • フックファイルの存在確認
  • settings.json の存在確認
  • ワークスペースシェルの完備確認
  • 環境変数 AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE の妥当性確認
  • ステージグラフのサイクル検出
  • スキーマバリデーション
  • キーワード重複検出
全項目パスなら終了コード0、1つでも失敗があれば終了コード1を返します。

/aidlc --doctor --export — 診断レポートの書き出し

--export を追加すると、ヘルスチェック結果を編集済みの診断レポートファイルとして書き出します。
1
2
/aidlc --doctor --export
/aidlc --doctor --export --output <dir>
デフォルトの出力先は aidlc/diagnostics/ です。レポートにはワークスペースのソースコード、環境変数、シークレット情報は含まれません。ホームディレクトリは ~、プロジェクトルートは <project> に置換されます。

ナビゲーション

では、ワークフロー内を移動するコマンドを見ていきましょう。

/aidlc --stage <slug|#> — ステージへジャンプ

slugまたは番号でステージを指定してジャンプします。
1
2
3
/aidlc --stage code-generation
/aidlc --stage 3.5
/aidlc --stage requirements-analysis
--scope と組み合わせることもできます。
1
/aidlc --stage code-generation --scope bugfix

/aidlc --stage <slug> --single — 1ステージを単独実行

メインワークフローの Current Stage を進めずに、指定ステージだけを実行します。エンジンが隔離を強制するため、メインワークフローに影響を与えることはありません。
1
2
/aidlc --stage requirements-analysis --single
/aidlc --stage reverse-engineering --single
この単独実行には、ステージに設定されたエージェントとレビュアーが適用されますが、ワークフロー学習や承認ゲートは実施されません。

/aidlc --phase <name|#> — フェーズへジャンプ

指定フェーズの先頭ステージにジャンプします。
1
2
/aidlc --phase construction
/aidlc --phase 3

スコープ・深度・テスト戦略・レビュー

次に、ワークフローの「形」と「密度」を制御するフラグを見ていきます。

/aidlc --scope <name> — スコープ変更

実行中ワークフローのスコープを変更します。EXECUTE/SKIPの再計算が行われ、SCOPE_CHANGED 監査イベントが記録されます。
1
2
/aidlc --scope bugfix
/aidlc --scope enterprise
--depth, --test-strategy, --review と組み合わせて同時に変更することも可能です。
ワークフローが存在しない場合は、そのスコープで新規ワークフローを開始する動作になります。
ここで注意が必要なのは、自律実行中のConstruction(Construction Autonomy Mode: autonomous)では拒否される点です。プラン変更にはゲートでの人間の確認が必要なため、先にゲートモードに切り替えるか、Swarmの完了を待つ必要があります。

/aidlc --depth <level> — 深度レベル変更

1
2
3
/aidlc --depth minimal
/aidlc --depth standard
/aidlc --depth comprehensive
DEPTH_CHANGED 監査イベントが記録されます。他のフラグと組み合わせ可能です。
1
2
/aidlc --scope bugfix --depth comprehensive
/aidlc --stage code-generation --depth minimal

/aidlc --test-strategy <level> — テスト戦略変更

深度とは独立した軸で、テストのボリュームを制御します。
1
2
3
/aidlc --test-strategy minimal
/aidlc --test-strategy standard
/aidlc --test-strategy comprehensive
テスト戦略のモデルは以下の通りです。
  • Minimal(Nyquist): 要件あたり1テスト、ユニットテストのみ(合計約5〜15本)
  • Standard: コンポーネントあたり5〜8テスト、ユニット+統合テスト
  • Comprehensive: コンポーネントあたり10〜15テスト、全テスト種別

/aidlc --review <class> — レビュー上限の設定

ステージレビューの上限を設定します。
1
2
3
/aidlc --review adversarial
/aidlc --review advisory
/aidlc --review none
実効レビュークラスは「ステージ宣言」「スコープの review_cap」「このオーバーライド」のうち低い方が適用されます。--review advisory はadversarialループをシングルパスに、--review none はレビュー自体をスキップします。

ワークフロー設定

/aidlc config get/set/list

設定値の取得・変更・一覧表示をまとめて提供するサブコマンドです。
1
2
3
4
5
6
/aidlc config get depth
/aidlc config set depth minimal
/aidlc config set test-strategy comprehensive
/aidlc config set review advisory
/aidlc config list
/aidlc config list --json

プラグイン管理

プラグインとは、ステージやエージェントをワークフローに追加する拡張機構です。デフォルトでは何もインストールされていませんが、追加すると以下のコマンドで管理できます。

/aidlc plugin select/list/sync

プラグインの有効化・無効化を管理します。
1
2
3
4
/aidlc plugin list
/aidlc plugin select test-pro
/aidlc plugin select aidlc,test-pro
/aidlc plugin sync
plugin list はインストール済みプラグインと有効/無効状態を表示します。plugin select はカンマ区切りでプラグイン選択を設定します。plugin sync はインストール済みプラグインのcomposeフックを実行します。

その他

/aidlc --version

フレームワークのバージョンを表示します。読み取り専用で、ワークフローなしでも動作します。

/aidlc --help

利用可能なコマンドとフラグのサマリーを表示します。

5. ランナーコマンド

ランナーコマンドとは、/aidlc にフラグを付けた操作を1コマンドにまとめたショートカットです。たとえば /aidlc-bugfix は /aidlc --scope bugfix と同じ動作をします。独自の機能は持たず、タイピングの省力化と / メニューでの可視性が目的です(Skills and Runner Commands )。ランナーをすべて削除しても、/aidlc フラグで同じことができます。

スコープランナー(4種)

スコープを固定してワークフローを駆動します。スコープ検出をスキップして、すぐに始めたい時に便利です。
1
2
3
4
/aidlc-bugfix == /aidlc --scope bugfix
/aidlc-feature == /aidlc --scope feature
/aidlc-mvp == /aidlc --scope mvp
/aidlc-security-patch == /aidlc --scope security-patch
ランナーにも説明やフラグをそのまま渡せます。
1
2
/aidlc-bugfix The profile API returns 500 when display_name is null
/aidlc-feature --status
スコープランナーがあるのは、スコープファイルで runner: true が設定されている4つのみです。残りの5スコープ(enterprise, poc, infra, refactor, workshop)は /aidlc --scope <name> から使えます。

ステージランナー(29種)

1ステージを単独実行するランナーです。メインワークフローの Current Stage を進めることはありません。
1
2
3
/aidlc-code-generation == /aidlc --stage code-generation --single
/aidlc-requirements-analysis == /aidlc --stage requirements-analysis --single
/aidlc-reverse-engineering == /aidlc --stage reverse-engineering --single
ライフサイクルの全ランナブルステージに対して1つずつ存在します。Initializationの3ステージにはステージランナーがありません(半端なインテント作成に意味がないため)。代わりに、Initializationフェーズ全体を1コマンドにまとめた /aidlc-init があります。
1
/aidlc-init [--scope <name>] [description]

/aidlc-compose — Composeのショートカット

1
/aidlc-compose "harden the deployment pipeline and add observability"
/aidlc compose と同じ動作です。タイプ可能なショートカットとして提供されています。

6. コマンド詳細 — セッションスキル

セッションスキルはワークフローの振り返りに使う読み取り専用のコマンドです。ステージを進行させたり、監査イベントを発行したりすることはありません。データソースは aidlc-runtime summary --json の出力です(Skills and Runner Commands )。
では3つそれぞれの役割を見ていきましょう。

/aidlc-session-cost — コストビュー

セッションの所要時間、ステージ結果、メモリエントリ数、センサー実行結果、学習数を表示します。ターミナル出力のみで、ファイル生成は行いません。

/aidlc-replay — セッションナラティブ

非同期レビュー向けに、セッションの経緯を読みやすいナラティブ形式で表示します。「今日のセッションで何が起きたか」をチームメンバーに共有したい場面で使います。ターミナル出力のみです。

/aidlc-outcomes-pack — 引き継ぎドキュメント

チームへの引き継ぎ用ドキュメントとして OUTCOMES.md を生成します。3つのセッションスキルの中で、これだけがファイルを書き出します。

7. 環境変数

AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE

プロジェクトのデフォルトスコープを事前設定する環境変数です。settings.json の env ブロックに記述します(CLI Commands )。
1
2
3
4
5
{
"env": {
"AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE": "workshop"
}
}
有効な値は9つの組み込みスコープ名です。enterprise, feature, mvp, poc, bugfix, refactor, infra, security-patch, workshop。
では優先順位を確認しましょう。スコープの決定は以下の順序で行われます。
  1. CLIフラグによる明示指定(--scope bugfix)
  2. 記述テキストからのキーワード検出
  3. AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE 環境変数
  4. ハードコードされたフォールバック
言い換えれば、明示フラグが最優先で、環境変数はフラグもキーワードマッチも存在しない場合のデフォルトとして機能します。
この環境変数はワークフロー初期化時にのみ読み込まれます。一度 aidlc-state.md が作成されると、以降はステートファイルが権威ソースになります。

AIDLC_DISABLE_USAGE_TRACKING

1 に設定すると、トークン使用量のトラッキングを無効化します(Claude Codeのみ)。ステータスラインの ↑<in> ↓<out> $<usd> 表示が消え、完了イベントにコストロールアップが付かなくなります(Troubleshooting )。

AIDLC_DISABLE_REVIEWER_SCOPE_HOOK

1 に設定すると、レビュアーのファイル読み取りスコープ制約を無効化します。プロジェクト内に construction/ ディレクトリがAI-DLCのユニットとは無関係に存在し、正当なレビュアーの読み取りがブロックされる場合に使います(Troubleshooting )。

AIDLC_HOOK_DEBUG

1 に設定すると、フックの実行時にデバッグ出力を有効化します(Kiro IDE harness guide )。

8. コマンド詳細 — ユーティリティコマンド

ここまでは /aidlc で始まるフラグ群を見てきました。次に、直接呼び出すユーティリティツールを見ていきましょう。これらはフック(自動実行される処理)やステージプロトコルが内部で使用するものですが、デバッグや手動操作のハンドルとしても利用できます。
呼び出し形式は bun <harness-dir>/tools/<tool>.ts <subcommand> です。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
# Claude Codeの場合
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts <subcommand>

# Kiro IDE / Kiro CLIの場合
bun .kiro/tools/aidlc-utility.ts <subcommand>

# Codex CLIの場合
bun .codex/tools/aidlc-utility.ts <subcommand>

# opencode / GitHub Copilotの場合
bun .aidlc/tools/aidlc-utility.ts <subcommand>

aidlc-utility codekb-path — コードナレッジベースのパス解決

リバースエンジニアリングステージが生成するコードナレッジベースのディレクトリパスを返します。読み取り専用で、ディレクトリの作成や監査イベントの発行は行いません。
1
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts codekb-path --repo <repo>
--json を付けると {space, repo, dir} の構造で出力されます。

aidlc-utility codekb-scope-diff — コードナレッジベースの鮮度確認

リバースエンジニアリングの再実行前に、既存のコードナレッジベースが最新かどうかを判定します。「前回のスキャン結果はまだ使えるのか」を確認する場面で使います。
1
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts codekb-scope-diff --repo <repo>
判定結果は以下のいずれかです。
判定意味
NO_STORE初回スキャン(ストアが存在しない)
CURRENT分析済みパスに変更なし(再利用可能)
STALE分析済みパスに変更あり
UNVERIFIEDフィンガープリント計算不可(gitワークツリー外など)
UNKNOWN_SCOPEスコープ追跡以前のストア
--compare <timestamp.md> で新旧カバレッジの比較、--mint --paths <a,b,...> でフィンガープリントの生成も可能です。

aidlc-utility detect — 読み取り専用のワークスペーススキャン

ワークスペースの検出結果(プロジェクトタイプ、言語、フレームワーク、ビルドシステム)を出力します。Adaptive Composerが内部で利用しているスキャンと同じものです。
1
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts detect --json

aidlc-utility select-plugins — プラグイン選択

/aidlc plugin select の直接ユーティリティ形式です。
1
2
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts select-plugins test-pro
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts select-plugins aidlc,test-pro
引数なしで現在の選択状態を表示します。カンマ区切りで名前を渡すと設定を変更し、グラフの再コンパイルとランナーの再生成まで一括で行います。

aidlc-utility recompose — 実行中のプラン変更

実行中のワークフローで、まだ未実行のステージのEXECUTE/SKIP状態を変更します。通常は /aidlc compose(ワークフロー実行中)経由で到達するものであり、直接タイプする場面は限定的です。
1
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts recompose --skip <slugs> --add <slugs>
slugはカンマ区切りです。監査ロック下で実行され、RECOMPOSED イベントが記録されます。

aidlc-workspace-sync — リポジトリセットの同期

ワークスペースルートにオプションの repos.json マニフェストがある場合、宣言されたリポジトリセットとディスク上の状態を照合します。
1
2
bun .claude/tools/aidlc-workspace-sync.ts
bun .claude/tools/aidlc-workspace-sync.ts --force
宣言済みだがディスク上にないリポジトリをクローンし、.gitignore のマネージドブロックと aidlc.code-workspace ファイルを更新します。--force を付けると、repos.json に存在しないオーファン(孤立した)チェックアウトの処理も行います。

aidlc-graph ars — ARSスコアの算出

Adaptive Composerが内部で使用するAutonomy Risk Scoreの算術計算を直接実行できます。5つのスコアを渡すと、重み付け合成スコア、バンドラベル、ステージごとの期待値スクリーン、近接する既存スコープを含む結果がJSON形式で返ります。
1
bun .claude/tools/aidlc-graph.ts ars --iae 0.55 --csu 0.75 --ve 0.65 --r 0.50 --ua 0.55
定数は tools/data/ars-priors.json から読み込まれるため、同じスコアからは常に同じ結果が得られます。

aidlc-graph validate-grid — グリッドの依存関係チェック

任意のEXECUTE/SKIPグリッドJSONに対して依存関係の妥当性を検証します。
1
2
bun .claude/tools/aidlc-graph.ts validate-grid --proposal <path>
bun .claude/tools/aidlc-graph.ts validate-grid --proposal <path> --strict
--strict は recompose と同じ厳格モードです。--keywords でキーワード衝突チェックも行えます。

aidlc-sensor list/describe/fire — センサーの管理と手動実行

センサー(Sensor)とは、ステージ出力に対して自動実行される決定論的チェックのことです(第16回 で詳解)。通常はPostToolUseフックが自動で起動しますが、このツールで手動実行やマニフェストの確認もできます。
1
2
3
4
5
bun .claude/tools/aidlc-sensor.ts list
bun .claude/tools/aidlc-sensor.ts describe required-sections
bun .claude/tools/aidlc-sensor.ts fire required-sections \
--stage requirements-analysis \
--output-path <artifact-path>
サブコマンド動作
listフレームワークのセンサーをID・種別・説明とともに表示
describe <id>1つのセンサーのマニフェスト詳細を表示
fire <id> --stage <slug> --output-path <path>指定ファイルに対してセンサーを手動実行
手動実行でも SENSOR_FIRED 監査イベントが記録されます。センサーはアドバイザリー(助言的)であり、失敗してもコマンド自体はエラーになりません。フレームワークには claim-sources, required-sections, upstream-coverage, linter, type-check の5つが同梱されています。

aidlc-learnings surface/persist — 学習ゲートツール

ステージ承認後に memory.md(ステージ実行中の記録)から学習候補を抽出し、確認済みのものを永続化するツールです(第6回 で解説したLearning Loopの実装部分)。通常はオーケストレーターが自動で駆動するため、直接呼び出す場面はありません。
サブコマンド動作
surface --slug <stage-slug>承認済みステージの memory.md から候補を抽出(読み取り専用)
persist --slug <stage-slug> --selections-json <path>確認済み学習を project.md / team.md に書き込み
確認された学習は次のワークフローから適用されます。

aidlc-runtime compile/read/summary — ランタイムグラフの操作

ランタイムグラフ(runtime-graph.json)は、ワークフローで実際に何が起きたかを記録するデータ面のファイルです。セッションスキル(/aidlc-session-cost, /aidlc-replay, /aidlc-outcomes-pack)はこの summary --json の出力をデータソースとして使用しています。
サブコマンド動作
compile監査シャードと memory.md からランタイムグラフを再構築
read <stage-slug>1ステージの行を表示(タイムスタンプ、エージェント、センサー実行結果、結果)
summary [--json]ワークフロー全体の集計値を表示
1
2
bun .claude/tools/aidlc-runtime.ts read requirements-analysis
bun .claude/tools/aidlc-runtime.ts summary --json

9. ハーネス別の差異まとめ

最後に、ハーネスごとの差異を整理しておきましょう。機能は同一ですが、プレフィックスとツールのファイルパスが異なります(README )。

プレフィックス

ハーネスオーケストレーターランナー
Claude Code/aidlc/aidlc-bugfix など
Kiro IDE/aidlc/aidlc-bugfix など
Kiro CLI/aidlc/aidlc-bugfix など
opencode/aidlc/aidlc-bugfix など
GitHub Copilot/aidlc/aidlc-bugfix など
Codex CLI$aidlc$aidlc-bugfix など

ツールパス

ユーティリティコマンドを直接呼び出す場合のパスです。
ハーネスパス
Claude Code.claude/tools/
Kiro IDE.kiro/tools/
Kiro CLI.kiro/tools/
Codex CLI.codex/tools/
opencode.aidlc/tools/
GitHub Copilot.aidlc/tools/
1
2
3
4
5
# 例: doctorの直接実行
bun .claude/tools/aidlc-utility.ts doctor # Claude Code
bun .kiro/tools/aidlc-utility.ts doctor # Kiro IDE / Kiro CLI
bun .codex/tools/aidlc-utility.ts doctor # Codex CLI
bun .aidlc/tools/aidlc-utility.ts doctor # opencode / GitHub Copilot

動作に違いはあるか

フラグの動作、ステージグラフ、監査イベント、エンジンの挙動はハーネス間で同一です。エンジン(状態マシン、監査ログ、並行エージェントを調整するレフェリー)はバイト単位で同一であり、異なるのはシェル(呼び出し方法とスキルの配置場所)のみです。

まとめ

この記事ではV2の全コマンドをユースケース別に整理しました。
  • /aidlc フラグ群: ワークフローの開始・再開・ナビゲーション・設定変更をカバーする主要インターフェース
  • ユーティリティコマンド: エンジンが内部で使うツール群で、デバッグや手動操作にも使える
  • ランナーコマンド: /aidlc フラグのパッケージ化。タイピング省力化と / メニューでの可視性が目的
  • セッションスキル: ワークフロー完了後の振り返り用。読み取り専用
  • 環境変数: AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE でプロジェクトデフォルトを設定可能
「やりたいこと」が明確な場合はセクション3の逆引き表を、フラグの動作を知りたい場合はセクション4〜5を参照してください。

Series: AI-DLC Workflow V2の解説 (31 articles)

  1. …
  2. 18
    AI-DLC Workflow V2のCLIコマンドガイド: やりたいことから逆引きする This article
Any opinions in this article are those of the individual author and may not reflect the opinions of AWS.
Enjoyed reading this content? Let the author know!

Your likes, comments, shares, and saves help creators reach more builders.

Loading recommendations

Loading article