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AI-DLC Workflow V2のIdeation Phase: "作ってから考える"をやめる仕組み

「作りたいもの」が曖昧なまま実装に入って、途中で方向転換。そんな経験はありませんか? AI-DLC Workflow V2のIdeation phaseは「そもそも何を、なぜ作るのか」を固めてから次に進む構造になっています。シリーズ第9回

Series: AI-DLC Workflow V2の解説 (31 articles)

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AWS Japan, Developer Specialist SA

1. なぜIdeationが必要なのか

課題: 意図が曖昧なまま走り出す

AI-DLC Workflow V2(以降V2)のIdeation phaseを見ていきます。このフェーズは「そもそも何を、なぜ作るのか」を固めるための工程です。
AIによるコード生成が高速になるほど、「とりあえず作ってみる」ハードルは下がります。しかしその結果、何が起きるでしょうか。意図が曖昧なままConstructionに突入し、途中で「そもそもこれ何のために作ってるんだっけ」と立ち止まる。スコープが際限なく広がる。技術的に不可能な方向に3日分の実装を積んでから気づく。これらはAIコード生成を使ったプロジェクトで繰り返し観察されるパターンです。

解決: コードを書く前に「問い」を立てる

V2はIdeation phaseという「コードを1行も書かないフェーズ」を設けました。「何を作るか」「なぜ作るか」「どの範囲で作るか」を人間とAIが対話で固める工程です。Constructionのコード生成はもちろん、Inceptionの要件分析やアーキテクチャ設計よりも手前に位置し、ここで固まった土台が後続フェーズの品質を左右します。
第4回 で5フェーズ・33ステージの全体像を示した際、Ideation phaseは「Validate the initiative(イニシアティブの検証)」と位置づけました。

仕組み: 7ステージの段階的検証と承認ゲート

では、その仕組みの全体像を見ていきましょう。Ideation phaseは7つのステージで構成されています。
#ステージ名識別名リードエージェント実行条件何が決まるか
1.1Intent Capture & Framingintent-captureProduct AgentALWAYSプロジェクトの意図と利害関係者
1.2Market Researchmarket-researchProduct AgentCONDITIONAL競合分析とbuild-vs-buy判断
1.3Feasibility & ConstraintsfeasibilityArchitect AgentCONDITIONAL技術的実現可能性と制約
1.4Scope Definitionscope-definitionProduct AgentALWAYSスコープ境界とIntent Backlog
1.5Team Formationteam-formationDelivery AgentCONDITIONALチーム構成とモブ計画
1.6Rough Mockupsrough-mockupsDesign AgentCONDITIONALワイヤーフレームとユーザーフロー
1.7Approval & Handoffapproval-handoffDelivery AgentALWAYSInitiative BriefとInceptionへの引き継ぎ
各ステージの成果物が次のステージの入力になる連鎖構造を取り、段階ごとに承認ゲートを通過しながら具体化していきます。V2の設計原則「User decides, AI executes(人間が決定し、AIが実行する)」はこのフェーズでも同様で、すべてのステージで人間への質問と承認ゲートがあり、AIは情報を整理し選択肢を提示する役割に徹します。
この図ではALWAYSステージを実線の枠で、CONDITIONALステージを点線の枠で表しています。1.1 Intent Captureから始まり、条件に応じて1.2〜1.6を通過し、1.7 Approval & Handoffで承認を得てInception phaseに進む構造です。

2. 意図を捕まえる(Intent Capture & Framing)

課題: 一文の入力から何を読み取ればよいのか

ワークフロー全体の起点となるのがこのステージです。ユーザーが「/aidlc タスク管理APIを作りたい」と入力した瞬間を想像してみてください。この一文には、ビジネス課題も顧客像も成功指標も含まれていません。しかし曖昧なまま先に進めば、後続のすべてが推測の上に積み上がります。

解決: 構造化された質問で意図を引き出す

Product Agent(aidlc-product-agent)がリードし、Architect Agent(aidlc-architect-agent)がサポートとして技術的な観点を補います。エージェントはまずintent-capture-questions.mdを生成し、以下のような問いを構造化して投げかけます。
  • どのようなビジネス課題を解決するのか
  • 顧客は誰か(内部/外部)。どのような痛みを抱えているか
  • 成功とはどのような状態か。どの指標で測るか
  • このイニシアティブのトリガーは何か(市場圧力、技術的負債、規制、機会)
  • 主要なステークホルダーは誰で、それぞれ何を重視しているか
  • スコープや優先度を決定する人、影響を与える人は誰か
  • ワークフローが選択したスコープは、ユーザーの意図する製品境界と一致しているか
すべての質問に「未定義」「該当なし」の選択肢があります。決まっていないことは決まっていないと答えればよく、無理に埋める必要はありません。

仕組み: ソースタグ・矛盾検出・センサー検証

ここからが仕組みの核心です。質問ファイルの冒頭には## Sourcesセクションが置かれ、参照する情報源を明示的に登録します。
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## Sources
- [desc] Initial description: "タスク管理APIをユーザー認証付きで作りたい"
- [scope] Workflow-selected scope: `feature`.
- [memory:M1] `aidlc/spaces/default/memory/org.md#Way of Working`: "We use trunk-based development..."
[desc]はユーザーの元の記述、[scope]はワークフローが選択したスコープ、[memory:M<n>]はメモリレイヤーから読み込んだルールです。
回答が揃うと、Product Agentは矛盾検出を実行します。たとえば「顧客は社内チーム」と答えつつ「市場シェアの獲得」を成功指標に挙げた場合、その矛盾を検出し、追加質問で解消を図ります。
分析の結果、2つの成果物が生成されます。
  • intent-statement.md(意図表明書) — Problem Statement、Target Customer、Success Metrics、Initiative Trigger、Initial Scope Signal
  • stakeholder-map.md(ステークホルダーマップ) — 利害関係者、意思決定者 vs 影響者の区分、コミュニケーション要件
両方の成果物には共通ルールが適用されます。すべての主張ブロック(段落、リスト項目、表のデータ行)にソースタグを付与すること。確認できていないが有用な情報は## Assumptions & Open Questionsセクションに[assumption]タグ付きで記載し、事実と区別します。
仮定が残っている場合は追加の確認ステップが走り、「仮定を受け入れる」か「追加質問に変換する」かを選択できます。さらにProduct Lead Agent(aidlc-product-lead-agent)によるアドバイザリーレビューが最大2回反復します。
最後に、3つのセンサーが成果物を自動検証します。
センサー検証内容
claim-sourcesすべての主張にソースタグがあるか、参照元がステートやメモリファイルと一致するか
required-sections必要なH2見出しが揃っているか
upstream-coverage上流の成果物への参照があるか(このステージは最上流なのでデフォルトでパス)
センサーは成果物が書き込まれるたびに自動で発火し、結果がaudit logに記録されます。人間が承認する前に、機械的にチェックできることは機械に任せる設計です。
ここで固まるのは意図・ステークホルダー・成功指標の3点です。Ideation内のほとんどのステージがintent-statement.mdを入力として参照するので、フェーズ全体の方向性がここで決まります。

3. 市場と実現性を確認する(Market Research & Feasibility)

課題: 意図が固まっても「外の世界」と「技術の壁」が見えていない

Intent Captureでプロジェクトの意図が固まりました。しかし2つの問いが残っています。「同じ問題を解いている既存サービスはないのか」「技術的に本当に実現できるのか」です。この確認を飛ばして設計に入ると、完成間際で「既存SaaSを使えばよかった」や「この制約の下では不可能だった」と気づくことになります。

解決: 2つのCONDITIONALステージで外部と内部の実現性を検証する

V2はこの検証を2つの独立したステージに分けています。Market Research(1.2)が外部環境を、Feasibility & Constraints(1.3)が技術的実現性を担当します。どちらもCONDITIONALステージであり、プロジェクトの性質によってスキップされます。
ステージ実行される場合スキップされる場合
1.2 Market Research外部市場ポジショニングやbuild-vs-buy検討が必要内部ツール、バグ修正、リファクタリング
1.3 Feasibility統合制約、規制要件、重大な技術的不確実性がある技術的リスクがないトリビアルな変更
スコープでいえば、enterpriseとfeatureでは両方実行され、mvpではFeasibilityのみ、pocでは両方スキップされます。

仕組み: マルチエージェント構成と成果物の連鎖

Market Research(1.2)の仕組み
Product Agentがリードし、以下を調査します。
  • 市場に存在する競合製品やソリューション
  • 競合の強み・弱み・価格モデル
  • 関連する業界トレンドや規制の変化
  • 顧客が最低限期待すること(テーブルステークス)と差別化要因
  • Build(自作)vs Buy(購入)vs Partner(提携)の判断材料
成果物はcompetitive-analysis.md、market-trends.md、build-vs-buy.mdの3つです。入力としてintent-statementを必須で受け取り、「この意図に対して市場はどうなっているか」を調べる構造になっています。
Feasibility & Constraints(1.3)の仕組み
このステージの特徴はマルチエージェント構成です。Architect Agent(リード)に加え、AWS Platform Agent(AWSサービスの観点)とCompliance Agent(規制の観点)がサポートとして参加します。
たとえば「HIPAA準拠が必要」という制約をCompliance Agentが検出し、「その要件を満たすにはAWS GovCloudが必要」とAWS Platform Agentが補足し、Architect Agentが全体の実現可能性判断に組み込む、という流れです。
質問は以下の領域を網羅します。
  • 既存システムとの統合対象
  • 規制・コンプライアンス要件(PCI、HIPAA、SOC2、データレジデンシーなど)
  • チームの技術スタックとスキルプロファイル
  • 予算とタイムラインの制約
  • 組織的ブロッカー(変更凍結、競合する優先事項など)
成果物はfeasibility-assessment.md(技術的実現可能性の評価)、constraint-register.md(制約の台帳)、raid-log.md(リスク・仮定・課題・依存関係の記録)の3つです。
2つのステージの連鎖
Market Research → Feasibilityの順に実行されます。Feasibilityはcompetitive-analysisとmarket-trendsをオプション入力として受け取るため、Market Researchの結果が技術的実現可能性の判断に反映されます。Market Researchがスキップされた場合でも、intent-statementだけでFeasibilityは実行可能です。
ここで決まるのは「競合状況、build-vs-buy判断、技術的制約、リスクと依存関係」です。次のScope Definition(1.4)がこれらの情報をもとに現実的な境界を引きます。

4. スコープを引く(Scope Definition)

課題: 「何でもやりたい」が手戻りの温床になる

「何をしたいか」が固まり、「何ができるか」も見えました。しかしこの2つの間にギャップがあることは珍しくありません。やりたいことの全部は、予算やタイムラインや技術的制約の中で実現できない。あるいは実現できるが、優先順位をつけなければ全部が中途半端になる。In/Out境界を明示的に引かないまま次のフェーズに進むと、「これもスコープ内ですよね?」という問いが繰り返し発生し、いつまでもConstructionが始まりません。

解決: 境界と優先度を明文化する

Scope DefinitionはALWAYSステージです。Ideation phaseが走るすべてのスコープ(enterpriseからmvpまで)で実行されます。スコープの境界を明示的に引くことは後続フェーズの品質を左右する決定だからです。
Product Agent(リード)がスコープの境界を定義し、Delivery Agent(サポート)がデリバリーの観点から実現可能性とタイムラインを補足します。「やりたいこと」と「間に合うこと」のバランスを2つのエージェントが調整する構造です。

仕組み: scope-documentとintent-backlogの2層構造

質問は境界と優先度に集中します。
  • 価値を届ける最小限のスコープは何か
  • 必須の機能(must-have)と追加要望(nice-to-have)の区分
  • 機能間の依存関係
  • 順序の優先方針(リスク優先、価値優先、依存関係優先)
  • 特定機能に紐づくハードデッドラインの有無
回答をもとに2つの成果物が生成されます。
scope-document.md(スコープ定義書) — 「何がスコープ内で、何がスコープ外か」を明確に記述します。In/Out境界が曖昧なままだと、Inception以降で手戻りが発生するため、この時点で線を引きます。
intent-backlog.md(Intent Backlog) — スコープ内の項目を優先度付きで整理したバックログです。MoSCoW(Must/Should/Could/Won't)、WSJF(Weighted Shortest Job First)、RICE(Reach, Impact, Confidence, Effort)などの優先度付け手法を使い、各項目に優先度の根拠を付与します。
「Won't Have(this time)」カテゴリが重要です。「今回はやらないが、将来検討する」項目の置き場であり、明示的にスコープ外と宣言して記録に残します。スコープが膨らむのを防ぐうえで「やらない」を書き留めておくことは不可欠です。
intent-backlog.mdはレコードディレクトリにgitコミットされるので、ワークフロー完了後も消えません。ただし次のインテント開始時に過去のWon't Have項目が自動提示されることはありません。振り返りたい場合は、該当インテントのideation/scope-definition/intent-backlog.mdを直接確認するか、メモリレイヤー(project.md等)に書き残しておく必要があります。
Adaptive Composerとの関係
第5回 で解説したAdaptive Composerはステージ構成(EXECUTE/SKIP)を動的に組み替える仕組みです。Scope Definitionはそれとは異なり、プロジェクトの「製品境界」を定義するステージです。
  • Adaptive Composer: 33ステージのどれを実行するかを決める(ワークフロー構造の制御)
  • Scope Definition: プロジェクトとして何を含み何を含まないかを決める(製品境界の制御)
異なるレイヤーで動作しており、Adaptive Composerが決めたワークフロー構造の中で、Scope Definitionが製品境界を固めます。
入力としてintent-statementを必須、feasibility-assessmentとconstraint-registerをオプションで受け取ります。Feasibility(1.3)が実行されていれば制約情報がスコープ判断に反映されます。
ここで決まるのは「プロジェクトのIn/Out境界と、優先度付きのIntent Backlog」です。scope-documentとintent-backlogは、Team Formation(1.5)、Rough Mockups(1.6)、Approval & Handoff(1.7)のすべてから参照される共通基盤になります。

5. チームとUIの準備(Team Formation & Rough Mockups)

課題: 「誰がやるか」と「どう見えるか」が宙に浮いたまま進む

スコープが固まっても、2つの問題が残ることがあります。ひとつは「この規模の仕事を誰がやるのか」。スキルギャップ、キャパシティ不足、チーム間の依存が見えていない状態で計画を立てるのは危険です。もうひとつは「UIの方向性が共有されていない」。テキストの要件だけでは「3画面で十分なのか」「サイドバーかトップナビか」のレベルですら認識がずれ、Inception以降で手戻りが起きます。

解決: 2つのCONDITIONALステージで実行体制とUIの合意を取る

V2はTeam Formation(1.5)とRough Mockups(1.6)を独立したCONDITIONALステージとして設けています。
ステージ実行される場合スキップされる場合
1.5 Team Formationチーム構成が計画上重要な場合ソロ開発者、小規模チーム
1.6 Rough Mockupsユーザー向けUIがある場合API/バックエンド/インフラのみ
スコープでいえば、Team Formationはenterpriseとfeatureで実行され、Rough Mockupsはenterprise、feature、mvpで実行されます。

仕組み: 専門エージェントによる計画とレビュー

Team Formation(1.5)の仕組み
Delivery Agent(aidlc-delivery-agent)がリードします。技術選定や要件定義ではなく「誰が何をやるか」というデリバリー計画の領域だからです。質問は以下をカバーします。
  • 利用可能なチームとメンバー、現在のキャパシティと稼働率
  • 必要なスキル vs 利用可能なスキルのギャップ
  • 同じ人材プールから引かれる競合イニシアティブ
  • 望ましいチームトポロジーとタイムゾーン
  • 外部パートナーやコントラクターの必要性
成果物はteam-assessment.md(チーム可用性評価)、skill-matrix.md(スキルマトリクス)、mob-composition.md(モブ構成計画)の3つです。これらはInceptionのDelivery Planning(2.9)で直接参照され、どのBoltをどのチームが担当するかの実行計画の基盤になります。
Team Formationがスキップされた場合、Delivery Planningは「全BoltをAIエージェント(Developer Agent)が実行する」というデフォルト割り当てを適用します。
Rough Mockups(1.6)の仕組み
Design Agent(aidlc-design-agent)がリードし、Product Agent(aidlc-product-agent)がサポートとして製品要件の観点を補います。さらにProduct Lead Agent(aidlc-product-lead-agent)がレビューアとして品質を検証します。レビューはアドバイザリーレベルで最大2回反復します。Intent Capture(1.1)と同様にレビューアが設定されている数少ないステージです。
確認する内容は以下です。
  • 主要なユーザーエントリーポイントとキー画面
  • コアユーザーフロー(ハッピーパス)
  • 情報階層の構造
  • 既存のブランドガイドラインやデザインシステム
  • サポートすべきデバイスやフォームファクター
  • アクセシビリティ要件(WCAGレベル、スクリーンリーダー対応、キーボードナビゲーション)
成果物はwireframes.md(低忠実度ワイヤーフレーム)とuser-flow.md(コアユーザーフロー)です。ワイヤーフレームには各画面ごとに1行のアクセシビリティ注記(見出しレベル、ランドマークリージョン、キーボードエントリーポイント)が含まれます。
覚えておいてほしいのは、このステージは「ラフ」な段階だということです。InceptionのRefined Mockups(2.5)で詳細なUI仕様が改めて定義されます。
  • 1.6 Rough Mockups(Ideation): 機能仕様がまだ決まっていない段階で、画面構成とフローの「方向性」を合意する
  • 2.5 Refined Mockups(Inception): Requirements AnalysisとUser Storiesで機能仕様が決まった後に、コンポーネントレベルの「詳細」を確定する
2.5は1.6の出力(wireframes, user-flow)を入力として受け取り、機能仕様を重ねて詳細化する関係です。テキスト仕様やASCIIワイヤーフレームだけでは認識のズレが残る場合、このステージ内でHTML/CSS/JSの動くプロトタイプを生成させ、操作しながら方向性を確認するのも有効です。

6. 承認ゲートでInceptionへ(Approval & Handoff)

課題: 成果物がバラバラのまま次のフェーズに渡ってしまう

ここまでのステージで、意図・市場・実現性・スコープ・チーム・UIそれぞれの成果物が生成されました。しかしこれらが個別に存在するだけでは、Inception phaseの各ステージが「全体として何が決まったのか」を把握しづらくなります。また、成果物間で矛盾が残ったまま先に進むリスクもあります。

解決: 集約・検証・承認の3ステップで引き継ぐ

Approval & Handoff(1.7)はIdeation phaseの最終ALWAYSステージです。Delivery Agent(リード)とProduct Agent(サポート)が、ここまでの全成果物を集約し、整合性を検証し、人間の最終承認を得てInceptionに引き継ぎます。
enterpriseとfeatureスコープで実行されます。pocではIdeation phase自体がIntent Captureのみに短縮されるため到達せず、mvpでもこのステージはスコープ外です。

仕組み: Initiative Brief・フェーズ境界検証・Go/No-Go判断

入力の集約
このステージが受け取る上流成果物は他のステージより多くなっています。
  • 必須入力: intent-statement、stakeholder-map(1.1から)、scope-document、intent-backlog(1.4から)
  • オプション入力: competitive-analysis(1.2から)、feasibility-assessment、constraint-register(1.3から)、team-assessment(1.5から)、wireframes(1.6から)
CONDITIONALステージの成果物はオプション入力として定義されているため、スキップされたステージがあっても動作します。
成果物の生成
集約した情報から2つの成果物が生成されます。
  • initiative-brief.md(イニシアティブブリーフ) — Ideation phase全体の「ワンページャー」。意図と課題の要約、市場検証の概要、実現可能性とリスクのハイライト、スコープの境界、UIコンセプト(該当する場合)、チーム計画、Go/No-Goの判断材料を1つのドキュメントにまとめます
  • decision-log.md(決定ログ) — Ideation phase中に行われたすべての決定を記録。「何を」「なぜ」「いつ」決めたかのトレーサビリティを提供します
フェーズ境界検証(Phase Boundary Verification)
Ideation → Inceptionの境界で自動検証が走ります。
  • Intent → Scope → Intent Backlogの一貫性
  • すべてのスコープ項目にFeasibilityの裏付けがあること
検証結果はverification/phase-check-ideation.mdに書き出され、audit logにPHASE_VERIFIEDとして記録されます。検証に通らない場合、問題箇所が明示され、修正してから再度承認を試みる流れになります。
Go/No-Go判断
最終ゲートでユーザーに提示される選択肢は3つです。
  1. Approve(承認) — Inception phaseに進む
  2. Request Changes(修正依頼) — フィードバックを付けて修正を要求する
  3. Reject Initiative(却下) — ワークフローを終了する
「Reject Initiative」はIdeation phase固有の選択肢です。他のステージの承認ゲートにはApproveとRequest Changesの2択しかありませんが、このステージではプロジェクト自体を中止する判断が可能です。市場調査や実現可能性評価の結果、「やらない」という結論に至ることも正当な成果だからです。
承認されれば、initiative-briefとdecision-logが引き継ぎ文書として機能し、Inceptionの最初のステージ(Reverse EngineeringまたはPractices Discovery)が始まります。

7. スコープ別の実行パターン

課題: すべてのプロジェクトに同じ検証を適用すると過剰か不足になる

バグ修正に7ステージのIdeationは不要です。一方、全社プラットフォームの構築で意図の記録だけで済ませたら、後続フェーズで確実に破綻します。プロジェクトの規模と性質によって「適切な検証量」が異なるという事実は、固定長のプロセスでは対応できません。

解決: スコープがIdeation phaseの「厚さ」を自動的に決める

V2ではスコープに応じてどのステージを実行するかが事前に定義されています。
スコープ実行されるステージ
enterprise全7ステージ
feature全7ステージ
mvpIntent Capture, Feasibility, Scope Definition, Rough Mockups(4ステージ)
pocIntent Captureのみ(1ステージ)
bugfix, refactor, infra, security-patchIdeation phase自体がほぼスキップ

仕組み: ALWAYS/CONDITIONAL分類とAdaptive Composerの組み合わせ

この自動スケーリングを支えているのは2つの仕組みです。
ALWAYS/CONDITIONAL分類
  • ALWAYS(必ず実行): 1.1 Intent Capture、1.4 Scope Definition、1.7 Approval & Handoff
  • CONDITIONAL(条件付き実行): 1.2 Market Research、1.3 Feasibility、1.5 Team Formation、1.6 Rough Mockups
CONDITIONALステージのスキップ条件を整理します。
ステージスキップ条件
1.2 Market Research外部市場ポジショニングが不要(内部ツール、バグ修正、リファクタリング)
1.3 Feasibility技術的リスクが低く、統合制約や規制要件がない
1.5 Team Formationソロ開発者や小規模チームで、構成計画が不要
1.6 Rough MockupsUIがないAPI/バックエンド/インフラのみのプロジェクト
Adaptive Composerによるカスタム構成
第5回 で解説したAdaptive Composerでカスタムスコープを構成する場合、7ステージのEXECUTE/SKIPを個別に制御できます。定義済みスコープのパターンが合わないプロジェクトでは、Composerでステージ構成を調整すればよいということです。
pocの設計意図
pocはIntent Captureだけが実行されて次のフェーズに進みます。「requirements-analysisだけでよくない?」と思うかもしれませんが、pocは「これ動く?」という1つの問いに答えるスコープです。requirements-analysisは「何を作るか」の要件整理であり、「そもそも何を証明しようとしているのか」の意図記録はintent-captureが担います。その問いを立てる起点として、最小パスに残されています。

まとめ

Ideation phaseの各セクションで見てきた「課題→解決→仕組み」を振り返ります。
#ステージ課題解決主な仕組み
1.1Intent Capture一文の入力から何を読み取ればよいか構造化された質問で意図を引き出すソースタグ、矛盾検出、センサー検証
1.2Market Research外部環境が見えていない競合とbuild-vs-buyを調査するProduct Agentによる市場分析
1.3Feasibility技術的な壁が見えていないマルチエージェントで実現性を検証するArchitect + AWS Platform + Compliance
1.4Scope Definition境界が曖昧でスコープが膨らむIn/Outと優先度を明文化するscope-document + intent-backlog
1.5Team Formation誰がやるか宙に浮いているキャパシティとスキルギャップを分析するチーム評価 + モブ構成計画
1.6Rough MockupsUIの認識がずれている低忠実度のワイヤーフレームで合意するワイヤーフレーム + ユーザーフロー
1.7Approval & Handoff成果物がバラバラのまま次へ渡る集約・検証・承認の3ステップで引き継ぐInitiative Brief + フェーズ境界検証

Inception Phaseとの接続

Inceptionが読み込むIdeation成果物を整理します。
  • intent-statement.md — Requirements Analysis(2.3)が受け取り、構造化された要件に変換する
  • scope-document.md / intent-backlog.md — Scope Definitionの境界とBacklogがInception全体の枠組みになる
  • feasibility-assessment.md / constraint-register.md — 技術的制約がDomain Design(2.6)に反映される
  • wireframes.md / user-flow.md — Refined Mockups(2.5)の入力として詳細化される
  • initiative-brief.md — Delivery Planning(2.9)がイニシアティブ全体の文脈を把握する際に参照する

「コードを書かないフェーズ」の価値

Ideation phaseはコードを生成しません。マークダウンの成果物と質問ファイルだけが出力です。「早くコードを書いてほしい」と感じるかもしれません。
しかし、ここで固めた意図・スコープ・制約がConstructionまで一貫して参照されることで、「何を作っているのかわからなくなる」「スコープが際限なく広がる」「技術的に不可能な方向に進んでしまう」といった問題を構造的に防いでいます。
すべてのステージに承認ゲートがあること。すべての主張にソースタグが付くこと。フェーズ境界でトレーサビリティが検証されること。これらが「人間が決定し、AIが実行する」の具体的な仕組みです。pocなら1ステージで完了し、enterpriseなら7ステージすべてが走る。プロジェクトの規模と性質に応じて自動的にスケールする構造が、過不足のない検証を実現しています。

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