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AI-DLC Workflow V2の5フェーズ:33ステージの全体地図とスコープによる使い分け

AI-DLC Workflow V2は5フェーズ・33ステージで構成されている。でも全部やるの? いいえ、スコープを選べば自動的に絞られます。この記事でフェーズの全体像を把握し、自分のプロジェクトに合った使い方を見つけてください。シリーズ第4回。

Series: AI-DLC Workflow V2の解説 (31 articles)

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AWS Japan, Developer Specialist SA

1. はじめに

この記事はAI-DLCシリーズの第4回です。第1回 ではV1からV2への設計の進化を、第2回 ではKiro CLIでのQuick Startを、第3回 ではClaude CodeでのQuick Startを扱いました。
今回のテーマは「5フェーズ・33ステージの全体地図」です。V2のワークフローがどう構成されているのか、各フェーズが何を担っているのか、そしてスコープによってどう絞り込まれるのかを見ていきます。
第2回でV2を動かしたとき、/aidlcを実行するとInitializationが自動で走り、Intent Captureで対話が始まったのを覚えているでしょうか。あの体験の裏で33ステージのうちどれが動いていたのか。この記事を読むと、その全体像が見えてきます。

2. V1の3フェーズ構成

V1は3フェーズで構成されていました(V1 README )。
フェーズ目的
Inception何を作り、なぜ作るのかを決める。要件分析、ユーザーストーリー作成、ドメイン設計、ユニット分割
Constructionどのように作るかを決め、実装する。詳細設計、コード生成、ビルド、テスト、品質保証
Operationsデプロイと運用監視(V1時点では将来構想として位置づけ)
シンプルな3段階で、プロジェクトの複雑さに応じて適応的に動作する設計でした。V2ではこの3フェーズがどう変化したのかを見ていきましょう。

3. V2で5フェーズになった背景

V2では3フェーズを5フェーズに再編しています。
変化のポイントは3つあります。
Initializationの分離
V1ではワークスペースの検出や状態初期化がフェーズの中に暗黙的に含まれていました。V2ではこれを独立したPhase 0として分離し、3ステージで自動実行します。ユーザー操作なしに完了するブートストラップ処理を、開発判断を伴うフェーズから切り離した形です。
IdeationとInceptionの分離
V1のInceptionは要件分析からドメイン設計・ユニット分割までを一つのフェーズで扱っていました。V2では「より粒度の細かい、組み合わせ可能な構成要素」という設計方針のもと、Ideation(意図の捕捉、実現可能性評価、スコープ定義、承認)とInception(要件分析、アーキテクチャ設計、ユニット分解、デリバリー計画)に分かれています。Ideationの最終ステージで承認を得てからInceptionに進む構造により、詳細化に入る前の判断ポイントが明確になっています。
Operationの実装
V1では将来構想だったOperationsフェーズを、V2では7ステージを持つ完全なフェーズとして実装しています。

4. Phase 0: Initialization

目的: ワークスペースをブートストラップする。
#ステージ説明
0.1Workspace Scaffoldインテントの記録ディレクトリを生成する
0.2Workspace Detectionプロジェクトの言語・フレームワーク・ビルドシステムを検出する
0.3State Initializationステートファイルと監査ログを初期化し、ルーティングを開始する
3つのステージすべてが承認ゲートなしで自動実行されます。既存プロジェクトの言語・フレームワーク検出、状態ファイルの生成、監査ログの初期化がここで行われます。
第2回の記事で/aidlcを実行した瞬間に走っていたのが、まさにこのフェーズです。ユーザーは何も意識する必要がなく、次のIdeationフェーズで初めて対話が始まります。

5. Phase 1: Ideation

目的: イニシアティブを検証する。意図を捕捉し、実現可能性を評価し、スコープを定義し、承認を得る。
#ステージ説明実行条件
1.1Intent Capture & Framingユーザーの説明から意図を構造化し、問題定義・顧客・成功指標を明確にする常に実行
1.2Market Research競合分析、Build vs Buy判断を行う条件付き
1.3Feasibility & Constraints技術的実現可能性を評価し、制約とリスクを洗い出す条件付き
1.4Scope Definition作る範囲・作らない範囲を定義し、インテントバックログを作成する常に実行
1.5Team Formationチーム構成とモブ編成プランを決定する条件付き
1.6Rough Mockupsワイヤーフレーム、ユーザーフロー、コンセプトデッキを作成する条件付き
1.7Approval & HandoffIdeationフェーズの成果物を集約し、次フェーズへの承認を得る常に実行
このフェーズの核になるのは2つのステージです。
Intent Capture & Framing
ユーザーの説明から「何を実現したいのか」を構造化します。問題定義、ターゲット顧客、成功指標を明確にし、以降のすべてのステージの起点になります。第2回で体験した最初の対話がこれです。
Scope Definition
作る範囲と作らない範囲を定義します。ここで選ばれたスコープが、後続のどのステージを実行するかを決定します(スコープについては後のセクションで詳しく見ます)。

6. Phase 2: Inception

目的: 要件を詳細化する。コードベースの分析、要件の引き出し、ドメイン設計、作業単位への分解、コンポーネント間の契約定義、デリバリー計画の策定。
#ステージ説明実行条件
2.1Reverse Engineering既存コードベースをスキャンし、構造を解析するBrownfield(既存コードベースがある)プロジェクトのみ
2.2Practices Discoveryチームの開発プラクティスを検出・確認し、ルールとして記録する条件付き
2.3Requirements Analysis要件を構造化し、テスト可能な形式に整理する常に実行
2.4User Storiesペルソナを定義し、ユーザーストーリーを作成する条件付き
2.5Refined Mockups高精度モックアップとインタラクション仕様を作成する条件付き
2.6Domain Designシステムの論理的な構成要素(コンポーネント)を特定・詳細化し、ADR(アーキテクチャ決定記録)を作成する条件付き
2.7Units Generation要件をユニット(作業単位)に分解し、依存関係の順序を定義する常に実行
2.8Contract Designコンポーネント間のインターフェース契約を定義する条件付き
2.9Delivery PlanningユニットをBoltにグルーピングし、実行順序を計画する常に実行
いくつかの代表的なステージを見ていきましょう。
Reverse Engineering
既存コードベースがあるプロジェクトで実行されます。開発エージェントがコードをスキャンし、アーキテクトエージェントがその結果を構造化して以降の設計判断に活用します。パイプライン方式(2つのエージェントが順番に処理する)で動作します。
Units Generation
要件をユニット(作業単位)に分解します。各ユニットは独立して設計・実装できる単位で、「AはBより先に完了する必要がある」といった依存関係の順序が定義されます。この順序が次のDelivery Planningで実行計画を決める入力になります。
Delivery Planning
ユニットをBoltにグルーピングし、実行順序を決めます。依存関係を考慮して並列実行可能なBoltを特定し、Constructionフェーズの実行計画を組み立てます。

7. Phase 3: Construction

目的: ソリューションを構築する。設計、実装、テストをレビュー可能な単位(スライス)で行う。
#ステージ説明実行単位
3.1Functional Designビジネスロジックモデルとビジネスルールを設計するBolt単位
3.2NFR Requirementsセキュリティ・パフォーマンス・信頼性の非機能要件を定義するBolt単位
3.3NFR Design非機能要件の設計仕様を作成するBolt単位
3.4Infrastructure Designインフラ仕様とIaCの設計を行うBolt単位
3.5Code Generationアプリケーションコードとコードドキュメントを生成するBolt単位
3.6Build and Test統合テストを実行し、品質レポートを生成する全体で1回
3.7CI PipelineCI設定と品質ゲートを構築する全体で1回(条件付き)
Constructionの特徴はBolt方式です。
ホワイトペーパーではBoltはスプリントに相当する高速イテレーションとして導入されましたが、V2の実装ではステージ3.1〜3.5を一つのユニット(または依存関係で結ばれた小グループ)に対して一巡させる実行単位として使われています。一度にすべてのユニットを実装するのではなく、Bolt単位で少しずつ積み上げていきます。
最初のBoltはWalking Skeleton、アーキテクチャを証明する最小のエンドツーエンドの単位です。これが承認されると、自律度選択プロンプト(ラダープロンプト)が一度だけ発動します。「残りのBoltを自律的に実行するか、毎回承認ゲートを設けるか」を選択でき、その選択はワークフロー終了まで維持されます。第1回で解説したインナーループ(AIによる自己検証)が本領を発揮するのは、ここで「自律的に実行」を選んだときです。
Build and Testは全Boltの完了後に一度だけ実行され、統合テストと品質レポートを生成します。

8. Phase 4: Operation

目的: デプロイと運用。デプロイパイプラインの構築、環境プロビジョニング、可観測性の設定、フィードバックループの確立。
#ステージ説明実行条件
4.1Deployment Pipelineデプロイパイプラインの設定、デプロイ戦略、ロールバック手順書を生成する条件付き
4.2Environment Provisioning環境インベントリと検証レポートを作成する条件付き
4.3Deployment Executionデプロイを実行し、スモークテストとヘルスチェックを行う条件付き
4.4Observability Setupダッシュボード、アラーム、SLO(サービスレベル目標)設定を構築する条件付き
4.5Incident ResponseSSMランブック、インシデント計画、エスカレーションマトリクスを作成する条件付き
4.6Performance Validation負荷テストを実行し、非機能要件の検証マトリクスを作成する条件付き
4.7Feedback & OptimizationSLOレポートとコスト分析を作成し、改善点を特定する条件付き
7つのステージすべてが条件付き実行です。mvp、poc、bugfix、refactorスコープではフェーズ全体がスキップされます。
Deployment Pipelineはデプロイパイプラインの設定とデプロイ戦略、ロールバック手順書を生成します。Observability Setupはダッシュボード、アラーム、SLO設定を構築します。
最終ステージ(Feedback & Optimization)の承認でワークフローは完了します。改善点が見つかった場合は、新しいIdeationサイクル(Phase 1)として開始することもできます。

9. 9つのプリセットスコープ

ここまでで5フェーズの全体像を見てきました。でも「33ステージを毎回全部やるの?」と思った方、安心してください。V2ではこの仕組みを「スコーピング」と呼んでいます。定義済みスコープを選ぶだけで、ステートマシン上の経路(通るステージの組み合わせ)が決まります。プリセットスコープが9つ用意されており、選択するだけで実行ステージが自動的に絞られます。
スコープ用途ステージ数深度
enterprise規制対応のエンタープライズ機能。完全な監査証跡とコンプライアンスレビューを含む33 / 33Comprehensive
feature任意サイズの新機能開発。スコープが特定できない場合のデフォルト33 / 33Standard
mvpグリーンフィールドのMVP構築。設計・実装は完全に行うが、後半の運用ステージをスキップ23 / 33Standard
workshopワークショップ・研修用。スコープは事前決定済みの前提で、Ideationをスキップ26 / 33Standard
infraインフラ変更(CDK更新、環境構築、コスト最適化)。ユーザー向けステージをスキップ13 / 33Standard
security-patchCVEやセキュリティ脆弱性への対応。セキュリティ関連ステージを重点的に実行10 / 33Minimal
poc実現可能性の素早い検証。大部分のIdeation・Inceptionをスキップ8 / 33Minimal
refactor機能変更なしのコード整理・再構成8 / 33Minimal
bugfix特定のバグ修正。意図確認からコード生成・テストまでの最短経路7 / 33Minimal
スコープは/aidlc実行時にプロジェクトの説明から自動推定されるか、--scope <name>で明示的に指定できます。
ポイントは、同じフレームワークがプロジェクトの規模に応じて伸縮するということです。小さなバグ修正に33ステージを走らせる必要はなく、bugfixを選べば7ステージで完結します。逆に規制対応の大規模機能ならenterpriseを選び、コンプライアンスやセキュリティレビューを含む全ステージを実行します。
深度(Depth)の列にも注目してください。Comprehensive / Standard / Minimalの3段階があり、スコープごとにデフォルトが設定されています。これは各ステージが生成するアーティファクトの詳細度を制御します。--depth <level>で上書きすることもできます。

10. まとめ

ここまでで、V2の5フェーズ・33ステージの全体像を見てきました。
  • Initialization(3ステージ): 自動ブートストラップ。ユーザー操作不要
  • Ideation(7ステージ): イニシアティブを検証する。意図の捕捉からスコープ定義まで
  • Inception(9ステージ): どう組み立てるかを固める。要件分析からデリバリー計画まで
  • Construction(7ステージ): Bolt方式でレビュー可能な単位(スライス)を積み上げる
  • Operation(7ステージ): デプロイパイプラインからフィードバックループまで
そして9つのプリセットスコープにより、7〜33ステージの間で実行範囲が自動的に調整されます。フェーズの全体像を把握した上で、自分のプロジェクトに合ったスコープを選ぶところから始めてみてください。

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